そば屋・ケーキ屋問題の解法(1)
「ひまなそば屋が作ったそばをひっくり返したらいくら損するでしょう」
「ケーキ屋がいつも完売するケーキを落としたらいくら損するでしょう」
というのは経済性分析の話によくでてくる問題。
これはもともと千住 鎮雄「新版 経済性工学の基礎―意思決定のための経済性分析」に載っている問題らしいのだが、いろんなところで引用されている。
岩田康成「社長になる人のための経理の本 (日経ビジネス人文庫)」とか。@ITのこことか。
http://www.atmarkit.co.jp/fbiz/cinvest/opinion/qa/qa20.html
この問題の考え方・解き方が何回聞いても覚えられないので一回整理する。
結論を先に書くと
- 受注生産か見込み生産か*1
- 手余りか手不足か
- 客に代わりの商品を出すかどうか
で問題の型が変わってくるのだが、どの型でも、損失の定義
ひっくり返すというイベントがない時に得られた金額 - ひっくり返した時に得られる金額
から考えれば正解が出てくることになっている。
例題
「社長になる人のための経理の本」P-180にある問題はこう:
- ラーメン屋のおやじが客の注文を受けて作ったラーメンをひっくり返した
- おやじはもう一杯作って客に出した
- ラーメンのコスト構造は以下の通り
売価 | 500円 |
---|---|
材料費・熱源代 | 80円 |
人件費 | 200円 |
利益 | 220円 |
- ひっくり返したことによる損失はいくらでしょう
同書では「正解は80円」となっている。
ひっくり返すイベントのあるなしで変動するのは材料費・熱源代の80円だけだから。この手の問題では固定費や営業利益はただのひっかけで、解答には全く関係がない。
ただし、この本の例題は暗黙のうちに「手余り」であることになっている。
仮に、毎日品切れしている繁盛店であれば、ひっくり返すイベントによって客に提供できるラーメンが1杯減る。
よって1杯分の材料費と1杯分の粗利を失うので、80+420=500円すなわち売価がまるごと損失になる。
*1:受注生産=そば屋、見込み生産=ケーキ屋