やわらかいものがうまいのはなぜか
テレビの食い物番組で、レポーターの女の子が「やわらかーい!」「とろとろー!」「ぷるぷるー!」とか言ったあとに「おいしーい!」ていう場面がよくある。
彼女たちはどうして、食い物がやわらかいと喜ぶのか。
飲食店のコンサルタント・大久保一彦氏によると、それは「咀嚼回数が少なくて済むから」なのだそうだ。
客に「うまい」と感じさせるには2つのやり方がある、と大久保氏は言う。
繁盛の天才 2時間の教え―127人の店長を成功させた P-217
ひとつは、胃をできるだけ早く、パンパンにしてあげることです。
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胃の中をスピーディーにいっぱいにするには、柔らかいものを提供し、表面をさくさくに仕上げて、
咀嚼回数を少なくしてあげるのが手っ取り早い方法です。
だから、外食産業は「柔らかさ」を追求してきたわけです。
もう一つは、塩分・糖分・アミノ酸を血中に一気に流し込んであげることです。
つまり、我々の中に
- 噛まなくても飲み込める -> 短時間で満腹になる -> 「うまい!」
- 塩分・糖分が濃い -> 短時間で血糖値が上がる -> 「うまい!」
という回路があるらしい。
流行っている飲食店は、この回路をどう利用しているのか。
1.からは、とにかく柔らかいものを出せばいいことがわかる。
2.からは、いかにして舌をだまして、ものすごく塩分・糖分の濃いものを食わせるかが勝負であるとわかる。
上記書によれば、ある繁盛店(ラーメン屋)では、つけ麺のつゆに、レンゲ大盛り2杯分の味の素を入れているという。
このつゆ(というか、実際には味の素)を客に飲み干させることが、この店の勝負ポイントになる。
そこで、味の素を隠すために、つゆには大量の辛味・酸味を加え、ゴワゴワの太麺に大量のもやしを乗せて出す。で、最後につゆを飲み干せ、と客に言う。
全ては客にレンゲ2杯分の味の素を飲ませるためにデザインされている。
この手のテクニックはいろいろなところで使われているという。
- コーラの炭酸は何のために入っているか --> 大量の糖分を抵抗無く飲ませるために入っている(だから、気の抜けたコーラは甘すぎて不味い)。
- ものすごく辛いスナック菓子はなぜ止められなくなるのか --> 大量のうまみ調味料が、辛さに隠されて抵抗無く摂取できるから。
うまい・まずいというモロに感覚の世界にも、プロは単純な法則を見出して利用しているのですね。