なぜ「ラーメンの味をよくする」では不正解なのか


ラーメン屋とカレー屋はどちらが儲かるのか?
http://bizmakoto.jp/makoto/articles/0705/29/news014.html
について、解き方を整理する。
あとこの問題について、ラーメンの味を改良するのはムダだという話。

最初の問題

単価も、原価などのコストも同じでお店の大きさや座席数も変わらないとすれば、
ある理由によって、行列のできるラーメン屋よりも行列のできるカレー屋のほうが
売上が多くなるという。それはなぜだろうか?

問題文から、どっちかの店の方が客の回転がよいことがわかる。
単価・席数が(書いてないけどたぶん営業時間も)等しく、客はいくらでもいる(いくら売っても行列が切れない)ことが前提なので、売上の違いの原因は一日にさばける客数の違い以外にない。
が、この人は「問題は分解してから解きなさい」という話をしたいので、いきなり「回転率が違うのです」と言わない。
売上を(客数×客単価)や(新規客+既存客)に分解して理由を探しましょう、といっている。
で、リンク先のページの絵を描いて得た結論が:

回転率と待ち時間、これがカレー屋のほうがラーメン屋よりも儲かる理由である。

「待ち時間を短縮すると回転率が上がる」という因果関係があるから、これは理由として2つ並べるのはちょっと変で、理由は回転率だけでいいんじゃないの。

次の問題

では、あなたがラーメン屋の店主だとする。ライバルのカレー屋に勝つために、
一人当たりの店の滞在時間を短くし、客の回転率を上げるには、どのような手を
打てばいいだろうか?


こういった問題についても、いきなり答えを探そうとしてはならない。まずは、
問題に構造を与えるべきなのだ。

「問題に構造を与える」とは、打ち手が考えられる単位に、問題を分解すること。
ここでは客の来店から退出までを「入店・注文・調理・食事・会計」に分解し、それぞれの工程に対して打ち手を割り当てる。
座席数という制約資源に対する改善だから、全ての打ち手が当たりで、どれも儲けにつながる。

分解することの効用

この話の教訓は「カレー屋はラーメン屋より儲かる」ではもちろんなくて、

  • 問題解決は2ステップに別けてやるべきで
  • それぞれのステップで「分解」という操作が有効

ということ。
第一段階で制約条件(ここでは座席数)を特定し、第二段階で制約条件に対する改善を漏れなくリストする。
制約条件とすべての改善策、どちらを発見するのにも分解という手段が有効。
ただし、この例題では第一段階で分解の効用がないので(問題文から自明なので)上記の教訓が読み取りにくい。誤読かもしれない。

第一段階重要

制約条件の特定というのはほんとうに大事なことだが、すっ飛ばされていることが多い。
前職で社長に「開発コストを2割下げろ」と言われたとき、いろんなことを試したが、どこが・誰がボトルネックになっているのか、本気で調べなかった。だから大した成果が出なかった。
あんまり好きじゃないんだけどワインバーグがこんなことを言っている:

未熟な問題解決者は、きっと解くべき問題を定義する時間を惜しんで解答に
とびつくものである。経験を積んだ問題解決者すら、社会的圧力にさらされる
と、この「急ぎたい」という気持ちに負ける。負けてしまえば、解答はたくさん
見つかるが、それが解くべき問題の解答だという保証はない。


ライト、ついてますか―問題発見の人間学

問題のラーメン屋がカレー屋より儲けようと思った場合、ラーメンの味を良くしたり内装をおしゃれにして女性客を取り込もうとしたりするのは全くの無駄だ。そうすれば客が増えるかもしれないが「客を増やす」のはここで解くべき問題ではない。客数は制約条件ではない。制約条件じゃないところを改善しても1円にもならない。