海辺のカフカにあの人が出てきた


現実逃避のため、今年初めてのフィクション「海辺のカフカ」を読む。
下巻の初めのほうにこんな場面があった。

青年はそのあいだテレビのワイドショーの芸能ゴシップを見ていた。
有名な女優が、それほど有名ではない若手の小説家と婚約していた。
そんなニュースには興味がなかったが、ほかに見るものもないので、彼はそれを見ていた。
女優の収入は作家の収入の十倍以上あるということだった。小説家はべつにハンサムでも
ないし、とくに頭がよさそうにも見えなかった。青年は首をひねった。
「よう、こういうのってまずうまくいかねえよな。たぶんなんか思い違いみてえなのがあるんだよな」
「ホシノさん、ホシノさんの骨はいささかずれております」

辻仁成のことかーーーーっ!!


ねじまき鳥の時は作家のコントロールを外れたお筆先のようなパートがたくさんあったが、今回はきっちり細部まで制御されている感じ。新しいイメージの爆発はないが、全てのエピソードが整理整頓され、結末に向かって一気になだれ込む。村上春樹の総決算みたいな小説。
上下巻合わせて1000ページあるのに、不思議と枚数が足りない印象。この人の小説はもっともっと長くなる。来たるべき「アフターダーク」の続編は、きっととんでもない長さになる。