株価なんて上げようとしなきゃいいのではないの


クレイトン・クリステンセンのイノベーションへの解のしょっぱなで考え込む。
クリステンセンはAT&Tを例に取り、「大企業が成長を企てること自体が、企業を破滅に追いやることも多い」と言う。
成熟市場を主戦場とする企業が株主からの期待(=圧力)に応えるためには、常に新市場への投資をしなくてはならない。この手の試みは大抵失敗し、市場平均を上回る成長を長期間維持できる企業は10社に1社もないという結果になる、とのこと。


失敗が永遠の成長を目指すことから始まっているとすれば、「株価の安定を目指し、成長を目指さない」という経営の方が株主のためになる、なんてことはないのかな。


株主というのは、本当に株価の恒常的な上昇を望んでいるのだろうか。
林輝太郎株式上達セミナーには、同和鉱業株だけを数十年間売買して大成功した証券会社社員の話が出てくる。この人がやっていたことは、「100円になったら買って、200円になったら売る」ということだけだった。それだけで大変な財産を築いたのだ。
仮に
A)永遠に上昇しつづける株
B)永遠に100円と200円の間を行ったり来たりする株
があったとして、どっちが欲しいかといったら、Bの方だろう。
B株を売買していれば永遠に利益を出しつづけることができるが、A株は買ったらそれっきり、もったいなくて死ぬまで売ることができない*1
株主にとって夢のような株とは「100円と200円の間を行ったり来たりする株」であり、それは「永遠に上昇しつづける株」よりは、まだ実現性が高いのではないか。

どっかの会社が「うちは株価が200円を突破したら仕事を手抜きします。100円近くになったらまたがんばります」と宣言して、そのとおりに実行したら株価はどうなるのだろう。「うちは絶えざる成長を目指します」みたいな絶対できないことを言っているより株主を幸せにできたりして。

*1:この株を担保に借金するという手はあるのですが