知能・創造性とは何か。あるいは剛毛が生えるという副作用をどうするか

変な邦題が付いたこの本に、知能や創造性というものに対する見方をひっくり返された。

あなたの「天才」の見つけ方―ハーバード大学教授がこっそり教える

あなたの「天才」の見つけ方―ハーバード大学教授がこっそり教える

私は、自分が設定した(あるいは誰かに設定された)目標を一直線で達成できる人のことを「有能である」と言うのだと思っていた。まあ、当たり前ですね。この能力観の下では、失敗はみっともないもので無能の証でしかない。
しかしランガー博士は「望んだ結果を得る力」=インテリジェンス中心の能力観をやせた考えとして退ける。そうではなくて「出てきた結果に意味を与える力」=マインドフルネスが重要なのだと強調する。


「出てきた結果に意味を与える」というと、また江原的なアレ=「失敗はすべて学びなんです、無駄なことなんてないんです」みたいだが、マインドフルネスとはそういうことではない。ランガー博士が言っているのは、評価軸を取り替えることで結果に価値を与えることが大事だ、ということだ。


博士はミノキシジルという薬のエピソードでマインドフルネスを説明する。
ミノキシジルは血圧降下剤として開発されたのだが、剛毛が生えるという強い副作用があった。
製薬会社にはマインドフルなスタッフが居て、副作用を軽減する努力をしないで、薄めて禿げの薬として売ってしまったのだという。

P-180ある問題を解決しようとしたが失敗したという事実を、違った視点からも見られると
気付いたときに、発見がなされたのだ。これらのマインドフルな人々は、問題から解決
法へと直線的には動かなかった。いろいろ視点を変えて、副作用をどうしようかという
問題の立て方を、この作用をどう役立てようかという問題の立て方へと変えたのだ。元来
の問題を解決することだけに固執していたら、このような可能性は見逃していただろう。

自分は一歩も動かずに、世界の座標軸をずらしてみることで何かを達成する。その座標軸をずらす能力こそが創造性だ。
ゴールは無数にあって、自分が何をやってもどこかのゴールにたどり着く可能性が開かれている。その道筋に気付けることを「知能が高い」というのだ。
なんて風通しのいい知能観だろう。屁理屈もここまでくれば感動的だ。