ITベンダーがユーザ企業のビジネスの限界を決めていいのかな

JTB情報システム社長・佐藤正史氏の渾身のコラム。
「真髄を語る 経営者がITを理解できない本当の理由」
http://itpro.nikkeibp.co.jp/a/biz/shinzui/shinzui0926/shinzui_03_1.shtml

4ページ目がポイント。

http://itpro.nikkeibp.co.jp/a/biz/shinzui/shinzui0926/shinzui_03_4.shtml
経営者のIT理解を妨げ、CIOを忙殺する、システム開発の不確実性の原因は何でしょうか。冒頭に書き
ましたように、我々ユーザー企業とITベンダーの仕事における責任分担が現状では非常に曖昧だという
点に問題があると考えます。

私が考える役割分担はこうです。我々ユーザー企業は、ビジネスにおけるIT投資の費用対効果を考え、
どんなビジネスをして、ITをどう使ったらいいかを考え抜く。できあがったシステムを使いこなして
ビジネスを遂行し、所定の効果を出すところに力を注ぐ。
...
一方、ITや情報システムの開発については、ITベンダーに責任をもって担当していただく。情報シス
テムの開発局面に必要とされるスキルとして、要件定義、システム設計、ソフト開発、全体のプロジ
ェクトマネジメントなどがありますが、これらはすべてITベンダーが持っているべき専門スキルと
考えます。

ユーザは企画立案のみで、ベンダはそれ以降全部、と責任分担を明確にすれば、情報システムの納期・コスト・品質の問題が解消するという主張。
...と書くと論理が飛躍してるみたいだが、全部読むとすごい説得力がある。


でもやっぱり、ユーザ企業にもITのプロは必要だと思うのね。例えばデータの問題。
ある企業が実行可能なビジネスの範囲を決めているのは、広義のデータベース(RDBでなくても、Excelファイルでも紙でもいいんだけど)だ。
データベースに入っていないデータに基づくビジネスは、やりたくてもできない。
人が居なかったら雇えばいいし、金が足りなかったら借りればいいんだけど、データだけは日々蓄積していないと挽回不可能。

  • ロット番号を記録していないメーカーは、特定のロットに何か問題があったときにも全量回収しなくてはならない
  • 顧客情報が受注データテーブルに埋まっている(顧客マスタがない)通販会社は「個客」マーケティングしたくてもできない

とか、そういう話*1


後者は、私が実際に見た例。
カタログ通販のDBとネット通販のDBを統合してCRMしたいという企画をいただいたが、カタログ通販側のデータベースに顧客マスタがなくて、ざっくり名寄せしてみると数千件の重複顧客らしきものが検出された。これらが重複かどうかを人力で判定するのは無理ということで、CRMの企画自体が流産してしまった。
これはつまり、データベース(の質の悪さ)がこの通販会社のビジネスを制限したということ。


ITベンダーにデータベースの設計を任せるということは、自社のビジネスの限界を他社に決めさせているということで、どこでも普通に見られる光景だが、これでいいわけがないと思う。
せっかく情報システム部門があるなら、DAを一人ぐらい置いたらいいんじゃないかと。

*1:こうしてみると「コード体系が企業のビジネスの限界を決める」という言い方もできそう