気合だけでヒグマに勝つ

3年ぐらい前、知床の番屋の漁師たちを扱ったNHKのドキュメンタリー番組を見た。
その映像がすげえの。番屋のまわりがヒグマだらけ。漁師たちが出港の準備をしている横で、防波堤をヒグマ一家がうろうろしている。


クマと人は、敬して遠ざけ合っている感じでお互い完全無視。ただしクマが一線を越えてきたら漁師のおじさんたちは反撃する。
魚網にいたずらをしているクマ(ものすごくでかい)を見つけたおじさんが、コラーとか言いながら猛然とクマに向かって走っていく。一人で。素手で。
びびったクマは、人間みたいに道路の上を走って逃げていく。おじさんを10Mぐらい引き離したところで振り返り「おぼえてやがれ!」というように立ち上がって威嚇するが、おじさんがまったくひるまないのでまた逃げていく。
おじさんの話によれば、この番屋を30年ぐらい使っているが、一度も鉄砲を持ち込んだことはないし、それでも一度も事故が起きていないのだそうだ。


学生の時に読んだ高名なヒグマ研究者の本に、山でクマにあったらどうすればいいかという章があって「クマに死んだふりは効かない。まず手近なことろにある棒を持ちなさい」と書いてあった。その理由が「棒を持つと勇気がわいてくるから」でダメだこりゃーと思ったのだが、クマとの戦いは実力よりも気合が重要なのだとすれば、棒を持ってみるのも無駄ではないのかもしれない。

クマのパンチの打ち方

余談だが、その本によれば、ヒグマの攻撃時の腕の動きは「内から外」なのだそうだ。
つまりストレートやフックではなく、人間で言えば平泳ぎの手のかき方で平手打ちしてくる。
人間にはない動きなので、たとえ格闘技をやっている人であっても、ヒグマの攻撃を回し受けしたり、スウェーしたりしようと思わない方がいい。