気付かないほうが幸せなこともある

リカルド・セムラー 奇跡の経営 一週間毎日が週末発想のススメ を読んだ。
ブラジルにあるセムコという会社の社長の自慢話。
セムコには

  • 組織図
  • 企業理念
  • 企業戦略
  • 短期・長期計画
  • 標準作業
  • 人事部
  • 経費の承認

といったものがない。
セムラーは、社員へのコントロールを極限まで減らした時に、社員は最高のパフォーマンスを発揮すると言う。
その信念から、セムラーは社員を管理するための道具を徹底的に排除する。


これは困った本だ。
自分は会社の中で自由に働いていると思っていたのに、実は「言ってはいけないこと」「思ってはいけないこと」をたくさん抱えていることに気づかされてしまった。
例えばこんなところを読んで:

人は一人前のおとなと見なされているのに、それが職場になると突然、半人前の若者のように扱われてしまうのはどうしてなのでしょうか?

「この四半期の目標は達成できたのか?」
「いいえ、できませんでした。」
「でも、君は目標を達成すると約束したではないか!」
わたしは、こんなばかげたことには一切かかわりたくありません。
これはまさに、人が本心ではやりたくないと思っていることを、誰かに約束させられたときに起こることなのです。

社員全員が、仕事に情熱を持つことを期待してはいけないということです。

すべての仕事が、情熱を持つに値するものではないという現実から目をそむけてはいけません。

社員に、5年後にどうなりたいか?などと聞くこともありません。
それよりも、社員自身に、いろいろいな業務を経験してもらいたいと思っています。

問題を抱えている会社に共通していることは、社員がめったに質問しないことです。


ウチは極めてオープンな社風だが、それでも「誰にも質問できないこと」がごろごろしている。
例えば、ウチには月150万/1人という売上のノルマがある。
その一方で、人月70万とかで受注した仕事がアサインされることがある。
作業量は1人月分あるが、1ヶ月その仕事だけをやっていたら評価がマイナスになってしまう。こういう時どうしたらよいか。
私自身には明確な回答があり、今までその回答の通りに行動してきたし、それが正しいと確信している。
が、「そういう時は〜すればいいんですよね?」と社長に言うことは、ものすごくはばかられる。何か、文句言ってるように聞こえるから。
同僚にもそういう話はしたくない。何か、会社に文句言ってるみたいに見えると思うから。


セムラーは普通の会社がセムコのようになるのは簡単だと言うが、んなわけがない。だから自慢話だというのだ。
平社員の視点からは、セムラーの言うことはよく分かる。
実力に関わらず大人として扱ってくれる組織に属していたら、私は全力でその組織を守ろうとするだろう。そんな場所他にあるわけないもの。
その一方で、自分が仮に社長だとしたら。
社員をその実力に関わらず大人として扱ってやれば、最高のパフォーマンスで応えてくれると信じられるだろうか?
社員に対するコントロールの放棄には、猛烈な抵抗感と恐怖感が伴うだろう。無理無理。できねぇって。
セムラーだって二代目のボンボンだからできたんじゃねーの。とか思ったりして。