外部環境がいちばんいいときに、測定と実験を行う

超一流への飛躍のために

藤沢武夫「経営に終わりはない」を読む。
ホンダは昭和30年代に、意図的に生産量を絞っていたことが分かった。
高度成長の開幕のこの時期、藤沢氏は「いくら売れても、どんなによい商品ができても、私がいいというまでは増産しないでくれ」と生産部門に命じている。
それはなぜか。

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増産すると、増産による利益なのか、ギリギリにしぼった線で利益が出てきた
のかがはっきりしません。今までやってきたものが高い材料だったのかどうか、
部品の在庫は何日分が適当であるのかというような基礎を判定できない。だか
ら、営業がいくら製品を欲しがっても、お客がどんなに欲しいといっても、
増産はまかりならんといった。
要するに町工場の延長として発展してきたものが、いよいよ大企業になるか
どうかというときに、その大企業としての準備が必要なんだ、ということを
私はいったのです。

儲けられるときに儲けておかない、もう1ホップ先のことを考えて測定を行っておく。
超一流への飛躍はそうやって準備されるのだな。

同時期にトヨタも「ジャスト・イン・タイム」に向けて実験を繰り返している。
大野耐一「トヨタ生産方式」には、昭和25年に「ジャスト・イン・タイム」への実験を開始し、昭和37年にようやく全社的に「かんばん」が使えるようになったとある。
作れば売れる時代に、極力作らないことを指向していたのだ。

ウチはどうする

儲けられるときに儲けておかない、というやり方は我々の身の丈には合わない。
が、毎日の仕事に測定と実験を付加することはできる。
実験はいっつもやってるけど、測定が決定的に足りないな。


意味のある測定(=次のアクションにつながる測定)ができない理由は、測定対象としての標準作業が決まっていないからだ。
開発手法を標準化して、各工程の作業を、プロジェクトをまたいで比較可能にする。
その上で、それぞれの作業の工数を測定する。
こうしないと、自分たちの腕が上がっているのかどうか、よく分からない。


ウチでは標準を作るというのは何かとんでもなく難しいことだと思われているが、そんなことはない。何の標準でも、3時間あれば作れる。
3時間で作った標準には、当然漏れや間違いがあるが、それでいいのだ。
これも大野耐一の受け売り。「大野耐一の現場経営」で、標準というのは使う人がたたき上げるものだから、最初は不十分なぐらいがちょうどよいと言っている。