「一般的には、第3正規形まででよい」の根拠は何か?(1)

わかった振りをしていることを再検討するシリーズの最初として、「データ構造の正規化は、実務的には第3正規形まででよい」と言われる根拠を探ってみる。
例えば鈴木昭男「実践 データベース設計バイブル」P-77にこうある。

一般的にデータベース設計では第3正規形にすることで、通常の処理においては
十分な正規化のレベルに達している。したがって第3正規形以降正規化を進める
ことは、データベース設計のうえでは意味がないと考えてよい。

この話題に触れたテキストは、たいていこんな感じで説明を打ち切っている。
でも「通常の処理においては十分な正規化のレベル」て何だろう?
このままでは設計時の指針には使えない...

仮説

いろいろ検索してみたが、どうして第3正規形で十分と言えるのか、そのものずばりの説明は見つけられなかった。
今ある仮説は以下の3つ:

  1. 「第3正規形まで持っていく手続きを施すと、たいていの表は完全正規形になる」が訛って「たいてい第3正規形で十分」となった
  2. 第3正規形をボイスコッド正規形に分解すると関数従属性が失われることがある、だから分解すると危険だ、という意味で「第3正規形で十分」となった
  3. 第5正規形への分解は、自然結合すると分解元に存在しなかった行が現れてしまうので、第5正規形には分解しないのが普通ということになった*1
調査項目

1.は、「第3正規形で十分」と言っている人が提示する正規形の例が、たいてい完全正規形になってしまっているので思いついたこと。これはないと思うのだが...
2.については、関数従属性の損失はボイスコッド正規形以上のいずれの正規形への分解でも発生すると教わった記憶があるのだが、第3正規形->BC正規形の分解以外で発生する例が想像できない。ここを調査。
3.は「結合射影の例外」というやつ。「第5正規形にはこの問題があります」と書いていないテキストが多いのだが、なぜなのだろう。ここも調査。*2

*1:これは第5正規形を理解していないことによる勘違い。

*2:これは勘違い。第5正規形への分解とは、結合すると元に戻るような分解のこと。