成熟は遅いほうがいい話

岡潔という人が教育について何か重要なことを語っていることはわかるのだが、語り口が難解でなかなか接近できない。 例えば名随筆の評価の高い「春宵十話」にこうある: すべて成熟は早すぎるよりも遅すぎる方がよい。 これが教育というものの根本原則だと思…

日本人は年々馬鹿になっているのかもしれない

「最近の若い奴は云々」はおっさんの繰り言であると同時に、真実でもあるのかもしれない。 以下は日本初のフィールズ賞受賞者・小平邦彦「ボクは算数しか出来なかった (岩波現代文庫)」からの引用。 (終戦後に疎開先から東京文理大に戻ってきて) いつの日か…

「汝の敵を愛せ」の意味

佐藤優 獄中記 によると、キリスト教が「汝の敵を愛せ」というのは、それが倫理的に立派なことだからではなく、それが事態を好転させるために必要だから、らしい。 P-365 「敵を愛する」ということは、白旗を揚げ敵に屈服する、あるいは敵におもねるというこ…

やる気には価値がない

外務省のラスプーチンこと佐藤優の獄中記を読む。 こんな話が出てくる。 「七年間、若手外交官の教育にあたった経験からすると、「国のために身を投げ出したい」とか、 「北方領土問題の解決に生命をかけたい」などというタイプは(必ず二年に一人か二人いる)…

やわらかいものがうまいのはなぜか

テレビの食い物番組で、レポーターの女の子が「やわらかーい!」「とろとろー!」「ぷるぷるー!」とか言ったあとに「おいしーい!」ていう場面がよくある。 彼女たちはどうして、食い物がやわらかいと喜ぶのか。 飲食店のコンサルタント・大久保一彦氏による…

楽々ERDレッスンを読む(3) - 最終回

楽々ERDレッスン (CodeZine BOOKS) のまとめ最終回。1,2回目はここ: http://d.hatena.ne.jp/tgk/20060526#1148750287 http://d.hatena.ne.jp/tgk/20060806#1154882768 第3部は例題が8つ。やってみて答え合わせするとけっこう同じ絵になっていてちょっと嬉し…

「何をエンティティにするのか」は、やはり明文化できないのだろうか

実践的データモデリング入門 (DB magazine selection) を読了。 「入門」とあるが、初学者が読んで即DB設計するのはきついという意味で、入門レベルの本ではないと思う。 これは多くの入門書に共通する壁なのだが、「何をエンティティにすればよいのか」がは…

海辺のカフカにあの人が出てきた

現実逃避のため、今年初めてのフィクション「海辺のカフカ」を読む。 下巻の初めのほうにこんな場面があった。 青年はそのあいだテレビのワイドショーの芸能ゴシップを見ていた。 有名な女優が、それほど有名ではない若手の小説家と婚約していた。 そんなニ…

楽々ERDレッスンを読む(2) - 第2部 RDBMS総論

羽生氏の 楽々ERDレッスン (CodeZine BOOKS) のまとめ2回目*1。 第2部のポイントは、P-114からの「インピーダンスミスマッチの解決方法」。 その方法とは... P-115 お薦めしたいのがストアドプロシージャを利用することです。 では、ストアドプロシージャ…

「箱」理論について

問題作 箱―Getting Out Of The Box を図書館で借りて読む。 自己啓発セミナーの会社が書いた、セミナー宣伝小説。 これはいい。 どうして自分の周りには嫌な奴がいっぱいいるのか 嫌な奴がいやなことをすると、不愉快なのと同時に微妙に嬉しいのはなぜか ど…

ネットにお返しをしなくてはならない

「返謝」という言葉があるそうだ。 ウチにころがってる本を見たら、こんな文章があった: 知恵や助けをもらったら必ず返すことです。私は「返謝で感謝が完成する」と思っています。 もらった同じ喜びを人に与える。優しさや知恵や助けをもらったら必ず返すこ…

強烈な嫌味を言われたような気分

巻末に自己啓発セミナーの広告が載っているソース~あなたの人生の源は、ワクワクすることにある。という本を読んだ。 マイク・マクマナスという、そのセミナーの元締めの人が書いた本。 主張はきわめてシンプル。 心からやりたいことがあったら、今すぐに、…

速読しないで本を速く読む方法

高校のときの古典の先生が教えてくれた、本を速く読む(ていうか、速く読んだのと同じ効果を得る)方法。 買ったけど読んでない本が常に100冊以上あるようにする 読まなくてよいところは目を滑らせて飛ばす 本に折り目をつける これは高校3年間に教わったこ…

大久保一彦氏が面白すぎる

飲食店経営のコンサルタント大久保一彦氏の本をまとめて読んでいる。 飲食店は仕掛けをして結果が出るまでのサイクルがものすごく短い。 今日出したアイデアを翌日実行して、すぐ行列ができたり。IT業界とはスピード感が違う。 飲食店「儲かるメニュー」の作…

楽々ERDレッスンを読む(1) - 第1部 DB設計総論

羽生 章洋「楽々ERDレッスン (CodeZine BOOKS)」を読了したので3回に分けてまとめ。 まず第1部「DB設計総論」。 浅海氏智晴氏はこの第1部について「上級者向け」と書いてらっしゃるが、そんなことはない。 初めてDB設計をやる人は絶対に読んだ方がいいと…

失敗が重要なのは、それが成功の母だからではない

G.ベイトソン精神と自然―生きた世界の認識論を読む。 この人は生態学者だが、書いてることがデータ設計と関係ありそうで気になる。 モノではなく関係を見ること 論理の「階」を識別すること への徹底したこだわりが、設計手法に取り込めそうな予感を呼ぶ。以…

7割できたらオープンする開発手法を作ってみたらどうか

ヌフカフェはなぜ潰れないのか ~武田康伸のカフェ経営哲学を読む。 有名なカフェ経営者(私は知らなかったけど)が書いた本。 武田氏が言うには、店のオープン前にはやることがいっぱいあってスケジュールがタイトになることが多いのだが、 無理やり予定どお…

自分がWikipediaを信頼していない理由がわかった

梅田望夫 ウェブ進化論 本当の大変化はこれから始まる (ちくま新書) を読んだ。 すいすい読めたが、P-187「ネットで信頼に足る百科事典は作れるか」だけがひっかかった。 このパートで、日ごろ考えないようにしているソースの信頼性ということを考えさせられ…

「データベース設計論」を読む(3) -- ここが理解できないうちはサブセットは使えない

T字形でnullを排除する方法に、「形式的サブセット」の導入がある。 形式的サブセット 顧客マスタに「携帯電話番号」を置くと、携帯を持っていない人の同属性がnullになってしまう。 (まあ、nullにしないで空文字列でも入れておけばいいのかもしれないが*1…

「C.J.Dateの データベース実践講義」からいつか役に立ちそうな話をメモ(2)

一応読了。 へぇと思ったところと、その他思いついたことをメモする。 ORDER BYはリレーショナル演算子ではない 理由は、タプルに並び順のあるもの=リレーションではないものを返すから。 とはいえ、DateはORDER BYを否定しているわけではない。 便利な道具…

ハーバードからの贈り物は、金八風の説教だった

ハーバードからの贈り物を読む。 ハーバード・ビジネススクールの教授たちが、学生に対して「テングになるな」「付き合いやすい人になれ」「人の役に立ちなさい」みたいな説教をする本。 1箇所だけ心に残ったところ: P-150: ハーバード・ビジネススクール…

気付かないほうが幸せなこともある

リカルド・セムラー 奇跡の経営 一週間毎日が週末発想のススメ を読んだ。 ブラジルにあるセムコという会社の社長の自慢話。 セムコには 組織図 企業理念 企業戦略 短期・長期計画 標準作業 人事部 経費の承認 といったものがない。 セムラーは、社員へのコ…

「C.J.Dateの データベース実践講義」からいつか役に立ちそうな話をメモ(1)

C.J.Date「データベース実践講義」を読んでみる。 面白そうなところを拾い読みしたが、実践というより理論に傾いた内容。 つまり、「既存のRDBを前提として、それをどのように使うと効果的か」を書いた本ではなく、「リレーショナルモデルから見て、既存のRD…

外部環境がいちばんいいときに、測定と実験を行う

超一流への飛躍のために 藤沢武夫「経営に終わりはない」を読む。 ホンダは昭和30年代に、意図的に生産量を絞っていたことが分かった。 高度成長の開幕のこの時期、藤沢氏は「いくら売れても、どんなによい商品ができても、私がいいというまでは増産しないで…

アイデアを実現できない理由がいっぱいあっても、それはアイデアがダメな証拠ではない

いい本なんだけど 「Joel on Software」を読む。めちゃくちゃ面白い。 ここには理想論はない。ソフトウェア開発者がかわいそうな状態にならないための現実的な策がいろいろ載っている。 例えばスケジュール管理は、Excelでたったの7列からなる表を作ってや…

「裏・お金の現実」のここはイクナイ

「裏・お金の現実」で、こりゃーダメだと思った点についても書く。 (モデリング関連のキーワードで来られた方はすみません。そのうち本題に戻りますので) 岡本氏は「裏・お金の現実」で、株はやっているがあんまり儲かってはいないと告白している。 確かに…

他人に儲けさせてもらおうと思ってもいいじゃないの

岡本吏郎「裏・お金の現実」がブックオフにあったので買って読む。 この本は自費出版で、本屋には置いていない。商業出版ではないのでかなりきつい言葉が使われている。 例えば「日本人は幼稚だ」という意味のことが書いてある。 P-73: 今の日本人の多くがお…

エンジニアリング・チェーン・マネジメント

昨年、現行商品点数が100ぐらいの食品メーカーの生産管理システムを作った。 メーカーさんのシステムは初めてだったのでいろいろカルチャーショックを受けたのだが、中でも、どの商品が今いくつあるのか誰もわかっていない(なのに業務が回っている)のはび…

SEは損な仕事、という説

岡本吏郎「なぜ、あなたの会社は儲からないのか」を便所で読む。 この中に「求められる人と活躍する人」という話があった。 「求められる人」というのは、その時代の発展に必要な技能を持った人で、仕事はたくさんあるが、時代の中で損な役回りをする。 高度…

「師」の共通点とは

本を読んでいると、年に一人ぐらい「ああ、俺はついに、師に出会ったのだなぁ」と感じさせてくれる著者に出会う。 自分の「師に出会ったのだなぁ」のツボはどこにあるのか考えてみると、 マイノリティである デタラメを教えているメジャーな人たちを激しく嫌…